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路傍の晶

第39回

「辿り着いた夢」 NO-DAMAGE  店主 中牟田さん

日常でもZ2を愛用する中牟田さん
日常でもZ2を愛用する中牟田さん

なにかの悪戯だろうか。出合いはひょんな偶然がもたらしたものだった。
 地元福岡の街を歩いていると、街道沿いに大きなバイクショップが建っている。物心ついた頃からバイクに興味を抱いていた18歳の青年は、いつもそうするように、店舗に並ぶさまざまなモデルを愛でながら通り過ぎようとした。そのときだ。ある一台がたまたま目に入った。1972年にシリーズが登場して以来、一時代を築いたカワサキの「Z-2」だった。
20年乗り続けているという愛車が目印
20年乗り続けているという愛車が目印
「20万円以上したんですが、矢も盾もたまらず買いました」若気の至りと頭をかきながら、中牟田さんは当時を振り返る。
「ちょうど高校も卒業した時期で、足が欲しいという思いもあった。でもなにより、ずっと好きなモデルでしたからね。ひと目で虜になり、廃車寸前だったけど手に入れた。それ以来、修理も改造も自分でやるようになりました。あのときの出合いがなければ、いまごろはお店もやっていなかったと思います」

 ただ、いまでこそそう思える道のりも、むかしから思い描いていたわけではない。アクション映画に興味を持っていた彼は、格闘家を目指していた。上京すると、パンプアップを兼ねて朝から肉体労働で汗を流し、フィットネスクラブでアルバイトに励み、合間を縫って空手やキックボクシングの道場に通う。まさしくトレーニング三昧の毎日だった。
バイクに似合う雑貨が所狭しと並ぶ
バイクに似合う雑貨が所狭しと並ぶ
ところが、知り合いを通じて芸能界に足を踏み入れるようになると、雲行きは変わってくる。トレーニングは疎かになり、力もみるみる落ちていった。おなじメニューに取り組んでも、半分も消化できない。それ以前に、モチベーションが上がらなかった。好きだったはずのものに情熱を注げない自分に気付き、苦悩した。

 そんな挫折に苛まれても必ず傍にあったのが、「Z-2」だった。ときに跨り、ときに手を施しながら、中牟田さんは「ほんとうに好きなものはなにか」に気付かされていく。それを体現したのが言うまでもない、独自のZ専門店だった。

 店を営むうえで、彼には譲れないこだわりがひとつある。「女性を連れてバイクショップに行っても当然、詰まらないですよね。でも年を取れば奥さんもいるし、男だけの楽しみにしておくのはもったいない。とくにZは古いバイクだけに、家庭を持った4,50代のお客さんが多い。だから女性が来ても楽しめる店をつくりたいと思ったんです」

 長い準備期間のあいだ、さまざまなショップを歩き見て、アメリカにも飛んだ。モータースポーツが文化として根付いている地の空気を吸収し、自身の店に反映させようと思ったのである。なるほど、「NO DAMAGE」には、既存のバイクショップでは見かけない古着や雑貨が所狭しと並んでいる。

「ゆくゆくはもっと広いスペースで開きたいですね」と、中牟田さんは言う。
「家族でいらしても、ゆっくり観てもらえるような楽しい店にしたい」
 オープンして2年、ひょんな出合いから導かれた夢は、まだハイウェイの途上にある。思い描くショップをつくりあげるまで、スロットルを緩めることはない。

取材・文◎隈元大吾

NO-DAMAGE
住所:〒171-0052
豊島区南長崎5-29-12 ユートリー55 1階
 
アクセス:西武池袋線 東長崎駅より 徒歩1分
 
電話番号:03-5982-1318
ファックス番号:03-5982-1318
営業時間:12:00~22:00
定休日:第1・第3水曜